オリジナルサイドストーリー CLOSE
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〈1〉

 冷ややかな晩秋の風に乗って、教会の鐘の音が聞こえてくる。
 ベンチに腰を降ろし、じっと瞳を伏せていたアルバは、近づいてきた足音に気づいて顔を上げた。
 重苦しい鈍色の空——。
 のしかかってくるようなその空の下を、黒服の男たちがやってくるのが見えた。ある者は無言で、またある者はタバコに火をともし、ただ、みな一様に暗い表情で、男たちは玉砂利の敷かれた小道の上を歩いてくる。
 アルバの隣でどこか哀しげなメロディーを口ずさんでいたソワレは、男たちを見やって軽く手を振った。
「よう」
「できればこういう衣装は着たくないもんだな」
 男たちの先頭にいたギャラガーが、ネクタイをゆるめてあたりを見回した。
「……なんだ、きょうの主役はまだ来てないのか?」
「学校帰りにそのままのカッコでってワケにはいかねえだろ。着替えてから来るって、さっきノエルから連絡あったぜ」
「そうか……」
 短く切り揃えられた顎先のヒゲを撫で、ギャラガーはしたり顔でうなずいた。
「——それじゃオレたちは、先に店に行って今夜の準備しとくよ」
「本当に手伝わなくていいのか?」
「ああ、そっちはオレたちでやっとくって。それよりおまえたちは、アンのそばについていてやれよ。……たぶん泣くぜ、あいつ」
「だろうな」
 そう苦笑して、アルバは空を見上げた。
「——早いものだな」
「ああ……」
 アルバの呟きに、ソワレがいつになく神妙な面持ちでうなずく。
 ギャラガーたちが歩み去ったあと、心の隙間に忍び込んでくるような沈黙を嫌って、アルバは大仰に嘆息した。













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